4月13日 リーズ公演(タウンホール)

4月13日 リーズ公演(タウンホール)

日本フィルハーモニー交響楽団の第6回ヨーロッパ公演も残すところ2日。ロンドンからバス4台に分乗して北上すること5時間、ウェスト・ヨークシャー州のリーズ市(人口75万人)に着いた。会場のタウンホール(1,500席)はヴィクトリア女王の勅命で1858年に完成した。美しい内装と響きに魅了される。

リーズ国際ピアノ・コンクールの開催地であり、1969年の第3回には日本フィル創立指揮者の渡邉暁雄が審査員として招かれ、優勝者のラドゥ・ルプーをいち早く日本に紹介する労もとった。私が2000年、フィンランドのラハティ交響楽団が企画したシベリウス・フェスティバルの第1回に招かれたとき、英国シベリウス協会の会長から声をかけられた。「あなたの国のアケオ・ワタナベは7曲あるシベリウスの交響曲の中で最も解釈が難しいとされる第6番のスペシャリストとして、英国のメジャー・オーケストラほぼ全てを制覇した偉人です」。

日本と英国はフィンランド国外で最初に、シベリウスを受容した国。世界初の交響曲全集はアンソニー・コリンズ指揮ロンドン交響楽団、ステレオ初(1度目)とデジタル初(2度目)の全集は渡邉指揮日本フィルが録音した。今回のツアー10公演中3公演が英国というのも偶然だが、渡邉の生誕100年にはふさわしい。60km南西のマンチェスターには、サー・ジョン・バルビローリ指揮で一世を風靡したハレ管弦楽団もあってリーズでも定期的に公演しているため、シベリウスに耳の肥えた聴衆が多い街でもある。シェク人気もあって、今夜も売り切れ。

前日のロンドンと同じ「D」プログラムだが、バスによる長旅の疲れが管楽器のブレスや弦楽器のアンサンブルに微妙な影を落としたのは否めない。インキネンはオーケストラのコンディションに即した現場判断からか、シベリウスの「交響曲第2番」では前日の遅めのテンポ、宗教曲を思わせる緊張感よりも大河のような流れを優先した。次第に強まる推進力が熱く激しく、血潮が吹き出る音楽として実を結び、ブラヴォーの嵐に包まれた。アンコールの「悲しいワルツ」は今夜、客席の興奮をいやす鎮静剤の役目を果たした。

シェク・カネー=メイソンとのエルガー「チェロ協奏曲」は今回が5回目で最後。オーケストラとの息も完全に合って有終の美を飾り、自らチェロ用に編曲したボブ・マーリー「ノー・ウーマン、ノー・クライ」をアンコールに弾いた。

弦楽器の響きが艶やかに溶け合うホールで得をしたのはラウタヴァーラ「In the Beginning」、武満徹「弦楽のためのレクイエム」と近現代の2曲だった。特に武満ではインキネンと作品の距離が日増しに縮まって、強い共感をこめて振るようになり、今夜が最高の出来栄えだった。

 

文・音楽ジャーナリスト 池田卓夫

写真・山口敦