4月3日 コウヴォラ公演(クーサンコスキターロ)

4月3日 コウヴォラ公演(クーサンコスキターロ)

ツアー2日目もフィンランドで、首席指揮者ピエタリ・インキネンの故郷コウヴォラ。座席数500のクーサンコスキターロ(Kuusankoskitalo、ターロは「ホール」の意味)が会場だ。コウヴォラはヘルシンキの北東約130km、ヨーロッパとロシアを結ぶ交通の要衝として発展、現在はフィンランド国内の鉄道と道路の結節点でもある。2009年に現在の市制が発足、83,000人の人口を擁する。日本フィルハーモニー交響楽団来演は日本とフィンランドの国交100周年、創立指揮者の渡邉暁雄の生誕100周年に加え、市制10周年の祝賀行事でもあった。

午後8時の本公演に先立ち、4時から小ホールでトロンボーンの伊波睦をファシリテーターとするワークショップを行い、地域の子どもたち約80人が集まった。手拍子、アカペラのカノン…と、伊波は言葉のいらない導入で壁を取り払う。通訳を交えての交流では春の話題を振り、松任谷由実の「春よ、来い」からヴィヴァルディの「春」まで、季節にちなんだ作品を弦楽四重奏などで演奏。最後にインキネンが現れ、子どもたちに日本語で「こんにちは」と語りかけた。

5時からのゲネプロの前半も、見学を希望する子どもには公開。インキネンは前日の練習が足りず、本番で「ヒヤリ」とした箇所を根気強く繰り返すとともに、金管の音量を入念に調整した。翌4日に20歳となるチェロのソリスト、シェク・カネー=メイソンは「ハッピー・バースデー」の合奏で迎えられた。

女性市長マリータ・トイッカ主催のレセプションに続く本番は、武満徹の「弦楽のためのレクイエム」で始まった。ホールのサイズに最適の作品といえ、たっぷりの余韻が温かな拍手を引き出した。続くエルガーの「チェロ協奏曲」、カネー=メイソンのソロはさらに輝いてオーケストラとの息もぴったり、雄大なスケールと落ち着きの両面で進展がみられた。アンコールは2016年に亡くなったカナダのシンガーソングライター・詩人・小説家レナード・コーエンの名曲「ハレルヤ」で、シェク自身が無伴奏チェロ用に編曲したもの。完璧だった。

後半はシベリウスの「交響曲第2番」。インキネンは平常心に立ち返って克明に振り、レガート(滑らかさ)を基本にじっくりと響きを深めていく。適度の緊張も伴いながら大きく、美しく、エスプレッシーヴォ(表現力豊か)な音楽を成就させた。聴衆の集中度もすさまじく、フィンランドには稀な「ブラヴォー」の歓声が上がった。アンコールは同じ作曲家の交響詩「フィンランディア」。フィンランドに生まれた作品が日本での熟成を経て、再びフィンランドの若いブレンダーによって新しい生命を獲得、客席全員がスタンディングで祝福した。

文・音楽ジャーナリスト 池田卓夫

写真・山口敦